お世話になっております。「つくよみちゃんプロジェクト」企画者の夢前黎です。
あるユーザー様からいただいたご質問へのご回答を、コラムとして掲載いたします。参考になりましたら幸いです。
あるユーザー様からのご質問(要約)
つくよみちゃんキャラクターライセンスでは次のように定められています。
■特定の政治的立場、宗教、思想への賛同または反対を呼びかける活動(権利運動、署名運動、示威運動を含む)にはご利用いただけません。また、いかなる目的であっても、前述の活動をしている個人・法人・団体等と同じ名義ではご利用いただけません。前述の活動とは無関係な活動において、別名義(同一人物と公言していないものに限る)で使用することは可能です。
本規約では、「法令上の規定を超えて、提唱者の考える正しさに合わせて他者の生き方を制限しようとする思想」全般を、政治的な思想や宗教的な思想に準ずる「思想」として位置づけています。「思想」は幅広い意味を持つ言葉ですが、ここでは思考の内容全般を指すのではなく、辞書において「特に、政治的、社会的な見解をいうことが多い」(デジタル大辞泉)、「特に、生活の中に生まれ、その生活・行動を支配する、ものの見方」(Oxford Languages)等と説明される意味合いで使われています。
また、附則のQ&A「法律を守るように呼びかけることは禁止事項の政治的活動に該当しますか?」では、次のように説明されています。
「法律を守りましょう」
「交通ルールを守りましょう」
「○○は犯罪なので注意しましょう」
「他者の権利を侵害しないようにしましょう」★ご質問を受けて2025.09.01追加
といった、すでに法律で定められていることについての啓発にご利用いただくことは政治活動には該当せず、問題ないと考えております。法律を変えようとする活動は政治活動ですが、法に則って法改正をした後にその新法を周知することは政治活動ではないという認識です。(「政治」という観点からは、すでに決着がついていることですので)
これに関連して、
というご質問をいただきました。
つくよみちゃん公式からの回答
ご連絡いただきましてありがとうございます。
「つくよみちゃんプロジェクト」企画者の夢前黎と申します。
この度は、つくよみちゃんのご利用をご検討いただきまして誠にありがとうございます。
ご質問の件につきましては、顧問弁護士の方にもご意見を伺ってみたいと存じますが、まずは私自身の考えを述べさせていただきます。「解説」ではなく、あくまで法律の専門家ではない個人の考えとなりますことをあらかじめご了承ください。
①「利用規約を守らなければならない」という思想が「法令上の規定を超えた思想」に該当するかどうかについて
混乱を避けるため、議題を
として進めさせていただきます。
まず、「利用規約」という言葉は著作物の利用ルールにだけ使われる言葉ではございません。
著作物の利用規約であれば「法令によって規定されている」、サービスの利用規約であれば「一般的なサービスであれば多くの場合法令によって規定されていそうだがすべてがそうであるとは言えない」というのが私の考えです。
著作物の利用規約は、「定型約款」として用意されている「使用許諾契約書」です。
基本的には無断で使用できない(※)とされている著作物をフリー素材や有料素材として使用できるのは、著作権者とユーザーが契約内容に合意(みなし合意)し、契約が成立しているためです。その使用許諾契約に違反した場合、契約違反=「民法上の債務不履行」であると同時に「著作権法違反」となると考えられます。
おっしゃっていただいたように、著作権法第六十三条では、
「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」
「2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる。」
と規定されています。
また、著作権法第二十条(同一性保持権)では、
「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」
とも規定されています。
これらのことから、
と私は考えております。
それを、
と言い換えることが不適切であるとすると、
ということにもなりかねず、権利保障の根幹が揺らぐことになるのではないでしょうか。
なお、サービスの利用規約については、例えばホテルの利用規約であれば、それを守らずにホテルに侵入すると不法侵入(建造物侵入罪)となる恐れがあります。
利用規約の内容によっては、刑法に当てはまるものがないこともあるでしょう。
民法第四百十五条(債務不履行による損害賠償)は、
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」
という、契約が守られなかった場合の債権者側の請求権を説明する文面となっているため、「契約を守らなければならない」とは書かれていません。
しかし、民法第一条において
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」
と規定されてるため、「契約を守る気はない」「損害を賠償しさえすればいくら契約違反してもいいんでしょ?」という気持ちで契約を結ぶ(または結んだふりをする)ことは民法に違反しており、法律違反と言えるのではないでしょうか。
法令には、「○○してはいけない」とは書かれていなくても、「××する権利を有する」「○○されない権利を有する」という書き方で、「他人の××を妨げる」「他人を○○する」ことを実質的に禁じている(あり得べからざることであると規定する)ことがしばしばあるように思います。
例えば「人を殺してはいけないという法律はない」という言説がありますが、殺人は憲法第十一条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」に違反しているため、実質的に禁じられているのではないかと存じます。
上述の通り、「『権利を守らなければならない』は法令によって規定されていない」とすると、最上位の法令である憲法の時点から拘束力が失墜してしまうため、法令によって規定されている権利を守るように呼びかける時に「○○しなければならない」「○○してはいけない」(例:利用規約を守らなければならない、人を殺してはいけない)という言い回しを使うことが必ずしも不適切であるとは思いません。
②「利用規約を守った創作活動を呼びかける活動」に、つくよみちゃんを利用できるかどうかについて
私の考えではご利用いただけます。
私の中では、Q&Aで問題ないとして例示している「交通ルールを守りましょう」と同じカテゴリーに入っています。
もしそれがライセンス違反になるのであれば、つくよみちゃんキャラクターライセンスまたは附則のQ&Aの方に不備があるということですので修正したいと存じます。
この点については顧問弁護士の方に精査していただきます。
つくよみちゃんを使って「利用規約を守った創作活動を呼びかける活動」を行われる際には、利用規約違反者への糾弾を趣旨とせず、「利用規約を守ればこんなにメリットがある」「利用規約を守らないのは“損”です(悪であるかどうかを問わず)」という方向性で、利用規約を守ることの「お得さ」に焦点を当てるようにしていただくと、安心してつくよみちゃんをご利用いただけるのではないかと存じます。
また、利用規約を守らないことを倫理的観点から責めるのではなく、罰則や社会的信用の失墜、トラブル対応の大変さといった損得勘定の観点から、著作権侵害や契約違反を起こした場合に待ち受けるデメリットについて解説していただくと、主観による批判ではなく客観的な学習用コンテンツであることが明確になります。
顧問弁護士の方のご見解
著作物の利用を念頭においた話だと思われますが、「著作物を使用するにあたり、利用規約を守らなければならない」という思想とは、「利用規約を守っていない利用は著作権侵害であるからやめるべきである」(※利用規約違反だからではなく、著作権侵害であるからというのがポイントです。)という意味になろうかと思います。そうである以上、この質問にあるような思想の呼びかけは、まさに、法令を守ろう、と呼びかける行為であろうと思います。
利用規約を守るように呼びかける「理由」がポイントです。
「悪だから」「神の怒りに触れるから」等の法令に基づかない理由ではなく、「著作権侵害だから」=「法令で規定されている権利を侵害するから」であれば、法令を守ろうと呼びかける行為以外の何物でもありません。
また、こうもおっしゃっていました。
利用規約が納得いかなければ規約に同意せずに著作物を利用しない、というのも立派な対応であり、法令を遵守していると言えるでしょう
その通りですね!